2013年10月12日

吾妻ひでお「失踪日記2 アル中病棟」を読んだ話。

結構ご無沙汰の日高見ですこんばんは。

次のライブレポはもうちょい先になりそうですが
この間ちょこちょこと音楽がらみ以外の小ネタはあったので
ちょこちょこ記事にしていきます。
音楽がらみの記事をご希望の方には合わないかもしれませんが
気になる方はおつきあいくださいませ。

で、今日は漫画の話題です。

4781610722失踪日記2 アル中病棟
吾妻ひでお
イースト・プレス 2013-10-06

by G-Tools


2005年に発売され大きな話題になった吾妻ひでお「失踪日記」の正式な続編となる
「失踪日記2 アル中病棟」が発売されました。

ちなみに「1」はこちら。

4872575334失踪日記
吾妻 ひでお
イースト・プレス 2005-03-01

by G-Tools


「1」を当時、この作者のこともあまり知らないまま結構気軽に読んで
色々衝撃をうけた自分的に相当待望の新刊です。

この間にスピンオフというか派生的な作品は様々発売されましたが
正式な続編は実に8年ぶり。
描いていることは本人の発信で度々目にしていたので、
いつになるのかなとは思っていたのですが、突然の発売でビックリしました(^^;

というわけで、以下「1」を踏まえた「2」の感想です。
気になる方のみ続きをどうぞ。

★「失踪日記」(1)がどのようなものかについては
  アマゾンの書評やWikipediaを見ていただくとよいと思います。
  自分の当時のブログ記事もありますが参考にならなさすぎた(^^;

-----------------


ということで、一時代を築いた漫画家が突然失踪し、
そのままホームレス生活、ガス配管公という紆余曲折を経て復帰するものの
その後アル中になってしまいアル中治療専門の病棟での入院生活を余儀なくされる
…というのが「1」の大まかな流れ。

こうして文章に書くと極めて重苦しいストーリーなのですが
独特のデフォルメされたキャラクターと語り口で不思議なエンターテイメントとして
完成された作品です。

ストーリーは基本的に「1」の後半「アル中病棟」からの後日談という形式。
入院し、退院するまでのストーリーです。

導入部分があるので「1」未読の方でも基本的に大きく問題はないように出来ていますが、
入院までの経緯は(その前の失踪という背景も含めて)「1」の方が詳しく描かれているので、
基本的には「1」を読んだ上で読むもの、2巻であるという認識でいたほうが良いと思います。

キャラクターは当然ながら造形も含め「1」と共通性がありますが、
性格などの描写がより丁寧になっていることと、
どっちが実際に近いのかは分かりませんが多少名前が変って描かれています。

「1」と比較しながら読むと一目瞭然ですが、コマが大きくなっていてキャラクターの
頭身が若干上がっています。一ページ1コマという大ゴマで
「病棟」と「外界」の解放感の差を表現したり、マンガとしての
視覚的インパクトは飛躍的に上がっています。字も少なくなってるかな。
何かしらの「情念」が渦巻く表現であった前作より「マンガ作品」という
意識がとても強くなっている印象があります。現在のかかりつけ医にアドバイスを
うけての作品ということも明確にしており、正確に情報を伝えていこう、という姿勢も
以前よりも高くなっていると思います。
(表紙カバーをめくったところに作中で出てくる自己診断表が印刷されています。赤裸々です。)

扱っている内容はテーマを絞ったことでよりディープで深刻になっていますが、
その客観性(というか登場人物が多い分前作のそれをさらに凌駕している気がしますが)のせいで
意外とさらっと読めてしまいます。読んだ後に、ジワジワ考えて恐ろしくなるという。

自分自身酒は好きなだけに、日常のすぐ隣にあり、いつ踏みこんでもおかしくない
非日常の世界を嫌でも意識させられてゾッとしていました。
そしてラスト退院しても、それでハッピーエンドじゃないという怖さ。
寧ろそれが新たな不安の始まりという恐ろしさ。
しかし、アル中病棟の面々とそれにまつわる人々とのやりとりと、
その軽妙な筆致のせいでサラリと心に入り込んでくる。そういう意味で凄い作品です。

また、前作よりも明確に存在感を持つ作者の家族の存在に
個人的にハッとさせられる場面が多かったのも印象的でした。
作者が自分の親と同い年で、娘さんがほぼ同い年(お子さんについて言及してた作品から
推定して勝手に同い年だと思ってたらWiki見たらちょっと違ってた)ということもあって
作者は漫画家としてみつつも、このシリーズは読みながらどこか自分の親が…と重ねながら
読んでしまうところがあったので、家族の印象が強かったのかもしれません。
やはり家族の存在って大切だな、と読みながら家族が出てくるたびに
なにかホッとした気持ちになっていました。

作者は読む人を選ぶ作風で、全盛期も「ビッグ・マイナー」と呼ばれた人。
自分も「1」の後様々な作品を読みましたが、魅力的な半面クセもとても強い人ですし、
時期によって作風も大分ちがうので、手放しにおススメ!とはちょっと言えないです(^^;
しかし、このシリーズに関しては(特にこの「アル中病棟」に関しては)
強いクセなく読むことができる作品だと思います。その「世代」の人以外には
手に取られづらいのかとも思うのですが、すぐそこにある、日常と紙一重の世界を
知るためには大変貴重な一冊だと思います。
吾妻先生を知らない人でも気になる方は是非読んでほしいし、
70-80年代の吾妻先生を知る人にも今につながる過程を知るために是非読んでほしい
そんな一作。気になったかたは是非ご一読を。


posted by 日高見 at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。